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土曜日は旅の記憶 Vol.6『風車の国で母を悼む』





2007年夏

母が逝った。





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私の生家は決して豊かではないが

貧しくもないごく普通の勤め人の家庭であったが

母はとても変った女性だった。

自分の産んだ娘たちには関心が持てなかったらしく

いわゆる女の子の祝い事である

ひな祭りや七五三や成人式であるとか

それはおろか、誕生日のお祝いやクリスマスなど

まったく祝ってはもらえなかった。







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祝い事だけではなく

私と姉は、母から例えば髪を結ってもらったり

風呂で身体を洗ってもらったりした記憶がまるでない。

歯磨きやトイレの始末などは幼稚園や学校で

他の級友がやっていることを見て覚えた。







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洋服はいつもよれよれで穴があき

首の周りは垢だらけ

今思えばとても薄汚い子供だったのだろうなと思う。







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まあ要するに

食べさせて学校には行かせてやるから

あとは勝手に生きていけよ的な母親だったので

おかげ様で自立心だけは身につき

こうして生きているのだから

その点ではありがたいと思わなければいけないのかもしれないが

あたりまえのことだが愛情には飢えて育った。







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そんな母が逝ったのだから

私も姉も涙の一滴も出るはずもなく

母が逝く2ヶ月前から計画をたてていたベルギー&オランダ旅行を

取り止めようとも思わずに

あたふたと葬儀をすませ、とっとと出かけてしまった。








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姉と二人でベルギーの街、

ブルージュやゲント、ブリュッセルを

「わあ!きれいね。」

「なんていいところなの」などと

夢中で観てまわり

帰国の2日前に立ち寄ったオランダの風車のある街の

運河の畔のカフェテラスで

二人とも忘れていた振りをしていたのだろう。

思い出したように母の話になった。






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凄い人だったよ。

自分だけが着飾って

自分だけが美味しいものを食べていたような人だった。

けれどあれが私たちの母親なんだからと

涙もでないけど、

産んでもらったことには感謝をしなければ。

けれど私たち二人は愛情に飢えているのだけは確かだと。






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だから、人からは『これでもか』と言う程の愛情を

示してもらいたいのだと。

だから、『これでもか』と言う程の愛情を示してくれる

犬が可愛くて仕方がないのだと。

お互いの傷口を舐め合うように

風車の羽がゆっくり休まずにまわるのを眺めながら

長い時間、テラスで佇んでいた。








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母の死を悼む振りをしながら

お互いの胸の痛みを分け合っていた。

日本にいたならばこんな時間は持てなかったかもしれないね。

思い切って出て来て良かったねと語り合いながら

私たちはいつまでも

絶え間なくまわる風車の羽を眺めながら

柔らな風を頬に感じ、

痛みを風がさらってくれればいいと願いながら

時の流れに身を任せていた。






遥か彼方のオランダの風が異国にいる私たち姉妹に

優しく吹いてくれたことを今、懐かしく想う。








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