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土曜日は旅の記憶 Vol.12『白雪姫の毒リンゴ』






「あなたが生まれた時にお父さんはがっかりしていた。」

「抱こうともしないし、名前を付けようともしなかった。」





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ああ、またかと思う。

聞き飽きたよ、それ。

耳にタコができそうなくらいに何百何千何万回も

もの心ついた時からずっと母に聞かされた言葉だ。

3人姉妹の末っ子の女の子として生まれた私は

母が他界するまでずっとその言葉を聞かされてきた。

幼い頃はただ悲しく、思春期のころは

産まなきゃよかったろうにと思ったものだ。







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1997年7月のスペイン、姉との旅の3日目は

マドリードから87kmに位置する世界遺産『セゴビア』だ。

この街ではローマ時代に造られた水道橋や

ディズニーのアニメ『白雪姫』の城のモデルとなった

アルカサルが観光の見所になっている。







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アルカサル=古城では実際に白雪姫が

継母に虐げられていたのではないけれど

その物語を想像するにふさわしい厳かな美しい姿で

私を物語の世界へと誘ってくれた。




成人以後、姉とは始めてのこの旅で

私は姉に、幼い頃からずっと母から言われ続けていた言葉が

どんなに深く私を傷つけてきたかを打ち明けた。

産まれてこなければ良かった存在だと我が身を呪い

両親に甘えずに生きていこうと

18歳で家を出る決心をしたのだと話した。






女の子ばかりの3番目になんか

産まれるもんじゃあないよと。







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すぐに姉に叱られた。

「何言ってんの。私は羨ましかったわよ。
 あなた、幾つまでお父さんの膝の上に座っていたと思う?
 小学生になっても座ってた。小さい子はいいなあって思っていたわよ。」

「お父さんは何をするでも、あなたの名前。
 あなたに聞いてからって、あなたが喜ぶからって。
 私は我慢しなさいって言われてた。」

「お父さんは、あなたのことをとても可愛がっていたから
 お母さんがあなたにそう言い続けたのは、
 お母さんの嫉妬だったのではないの。
 お父さんとあなたを不仲にさせるための策略だったのではないの。」







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えっ、母の策略?

 


そうなのだ。

確かに私はずいぶん大きくなるまで父の膝の上で甘えていた。

旅行好きの父は様々な場所へ連れて行ってくれ

泣きわめいて犬を欲しがる私にスピッツの仔犬を与えてくれた。

父が大層私を可愛がってくれたことの証拠じゃないか。

母の言葉に惑わされて、いったい何を見て

何を思って生きてきたんだろう。

愛されていないと信じ込んでいたけれど

私は十分愛されて育ってきたんだと

この時、それまでの寂しさや僻や妬みに囚われた人生を悔やみ

愛されていたという幸せを取り戻したいと、心から思った。






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物語の毒リンゴの呪いを解くのは王子様のキスだけれど
(ちなみに白雪姫に毒リンゴを食べさせたのはグリム童話初版本では実母となっている。)

現実には王子様など、何処にもいやしないのだ。

毒リンゴの解毒剤は自分自身の心のあり方なのだと思う。


嫉妬の言葉に惑わされることなく

しっかり自分の目で真実を見据えれば

自分に向けられている愛情を感じ取ることが出来れば

呪いを解くことなんて簡単で

そもそも呪にかけられる必要さえなかったのだ。


だから私は、聞き飽きた亡き母の言葉を文字に変え

旅の記憶を文章にすることで

呪を完全に消し解かす作業をしているのだ。




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一番最後の写真は壁紙リンクからお借りしました。



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