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さようならの儀式に寄り添って。





私には、結婚を機に石巻から離れた友がいる。

中学・高校と同じ学校で学んだ彼女。

宮城県の内陸の町に住むその彼女の、妹と弟が

今回の震災で住む家を失った。

震災後に、恐くて一度も石巻へ行っていないという彼女が

「行ってみようかな」と言う。

交通の手段のない彼女に付き合って、石巻をまわること、

そのくらいなら、私にも出来る。

早速、彼女の住む内陸の町まで彼女を迎えに、車を走らせた。




内陸の町で彼女を拾って、

まずは午後になると道路の冠水で入れなくなってしまう

妹の家がある渡波地区に向う。

道路の冠水は報道では、万石浦に面した塩富町ばかりがクローズアップされるが

実は石巻の沿岸部のいたるところで冠水がある。

万石浦の少し手前に位置する渡波地区も冠水の被害が酷い。

内海橋を渡って渡波までの間の国道398号線の両側の家並みは

今でも無惨な姿をさらしていて、初めてその光景を目にした

助手席の彼女は息を飲んだ様子だったが

渡波地区の住宅街は沿道の様子より更に酷く、やはり声が出ない。

道には崩れた家がのしかかって、ここで余震が起きたらと思うと

恐怖で逃げ出したくなる。

車が通れない箇所があちらこちらにあって

瓦礫に阻まれて、妹の家の前には車で入る事が出来なかった。

さすがに瓦礫の上を歩いて行く勇気が出ず

ぐずぐずしていると潮が満ちてきてしまうので

妹の家を見るのは断念して、南浜町の弟の家に向った。





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復興が進んだアスファルトの道路脇に車を止めて

泥だらけの道の、住宅街の痕跡の中に入ってみる。

彼女の記憶をたよりに、弟の家を探す。

「確か、コンビニがあった。」

「遊歩道の脇だった。」

「小学校の位置からすると、この辺りで間違いはないけど。」

「床と玄関の上がり口の石段4段だけ、残っているって。」

という彼女の言葉と記憶を頼りに、

床と石段の残っている家を探す。



この家も違う、あの家も違う。

「間取りが違うんだ。南が玄関で、玄関から入って

 右側に台所があった。」



目印が無くなった埃だらけの瓦礫の町で

床だけになってしまった家を探すのは難しい。

1時間以上も瓦礫の中を、探し続けても見つからず

「もういい。」と彼女が言い出すのを待って

それでもと、入ってきたのとは違う道を通って

アスファルトの道に戻ろうとした時に

郵便局の看板を見つけた彼女が、その近くに

目指す弟の家を見つけた。





SA2A0038_convert_20110516091105.jpg

築2年の2世帯住宅。

残された床と玄関の石段から

この家が大きくて立派だったことが分かる。

残された床の上の物は、何処からか流れ着いた物ばかりで

この家の物は一切残っていない。

ほんの少し前までの温かな暮らしの痕跡を

どこかに見つけようとして、床の上を探している彼女は

おそらくこの場所には2度と来ないつもりなのだろう。

私にはそれが、この家への彼女の

さようならの儀式に見えた。






SA2A0035_convert_20110516091049.jpg

強気の私もこの日は、さすがにカメラは持参できなかった。

だから、こっそりと、

でも、彼女にもわかるようにと、携帯で写真を撮った。

「これは弟のかな?」

帰り際にピンクのプラスチックのカゴに入った

数個のゴルフボールを指してつぶやいた、彼女の声が今も耳に残る。




私と彼女は同様に兄弟の家が津波の被害に遭っていても

私の姉が住む実家は、浸水の被害だけだった。

私は宮城県を遠く離れて、埼玉で暮らしているけれど

彼女の住む内陸の町も、津波の被害こそないけれど

地震の爪痕は、町のあちこちに残っていて

これからもずっとその町での暮らしが続いていくのだ。




さようならの儀式に寄り添うことは出来ても

こころの奥深くまで添う事は、悔しいけれど出来ない。

私が以前、このブログで取り上げた

『がんばろう!石巻』の看板をちらりと見て彼女がつぶやいた。




「この看板はいやだ。」

「山の上の家とのコントラストが凄いね。」




だからと言って、彼女が前向きではないのでは、ない。

毎日を必死で頑張って生きている。

頑張って生きているからこそ、深い悲しみと向かい合っているのだと思う。

今はまだ、悲しみと向かい合う期間なのだから。















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