駅前の交差点で、我が家の3軒隣りの
たくさんの花に囲まれて暮らす女性に会った。

そこで立ち話し。

彼女の愛犬のラブラドールレトリバーのごんた君が
昨年末に立てなくなったこと。
それからずっと獣医通いが続いていること。
今でもわずかな段差があると踏み外してしまうので
危なくて目が離せないこと。
腫瘍の検査では異常がなかったこと。

彼女は問わず語りを始めたことに気がついたのか
それとも泣き出しそうな気持ちを押し殺すためなのか
顔に苦笑いを浮かべてこう言った。
「疲れちゃってね。出かけられないし。
こっちがまいっちゃいそうだ。
でもね、今までたくさん慰めてもらったんだもの
出来る限りのことをして、今度は恩返しをしなくちゃね。」

「お父さんに留守番してもらって娘と食事。息抜き!息抜き。」
そして、そう言って去っていった。
彼女の話しを聞きながら私は
うなずくことしかできなかった。

足早に去る彼女の背中に
彼女の11歳の愛犬ごんたくんの顔が重なった。

気の効いたことひとつ言えなかった。
慰めや励ましの言葉をかけるより
ただ黙って彼女の話しを聞いて
うんうんとうなずくことが
話したい、聞いてもらいたいという彼女の気持ちに
添うことなのだという気もして。
聞くことで、彼女の悲しみや辛さをほんのわずかでも
受け取ることが出来たのなら
反対にほんのわずかでも彼女が楽になれることだと思うから
うなずくことしができないことが
私ができる唯一のこととも思えた。

「今までたくさん慰めてもらったから、今度は恩返し。」
彼女の言葉を声に出さずに繰り返した。
本当に、たくさん慰められている。
ありがとう、ありがとうと
何百何千何万も言っても足りないくらいに。
留守番をしているラムマリポの顔が
交互に瞼に浮かんで
愛おしくて、切なくて、
たまらなくなり
もう一度、彼女の言葉を繰り返した。
写真は昨年7月に駅前広場で撮影したマリネです。
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