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土曜日は旅の記憶 Vol.17『サイパン・終戦記念日に寄せて。』






今から6年前の2004年は

質より数という旅行熱に何故か侵されていて

5月フィリピン

8月メキシコ

11月サイパン 

明けて翌2005年2月に再びサイパンへと

本当にあきれるほどよく出かけた。




何故出かけるのか理由も分からず出かけている上に

何故かメキシコ以外の写真が1枚も残っていない。

記憶の糸をたぐり寄せてみるのも虚しく

写真を撮った記憶がそもそもないのだ。




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何故、写真を撮らなかったのかも思い出せなかったが

それでも気を取り直して家中を探してみると

以前使用していた携帯電話のメモリーに

1枚の写真が残っていた。




バンザイクリフで写したもの。

2度のサイパンの旅で残された

たった1枚の写真。





そう確か、と

この写真を写した時の記憶が蘇ってくる。




以下に掲載する写真は全てネット上のフリー画像からお借りしたものです。

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日本からわずか3時間余りで行けるサイパンは

白いプルメリアの花が咲き乱れる南国の楽園で、

田舎町ではあるけれど

ショッピングや食事も楽しめる

程よい大きさの町があり

白砂の気持ちの良いビーチもあって

それなりに楽しめるのだけれど

2度の滞在のそのどちらも

私は、楽園リゾート気分に心から浸れはしなかった。





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それは、サイパンの島中のあちらこちらに

太平洋戦争の爪痕が残されているからなのだけれど。

賑やかな街角を抜け、ビーチに面した真っ直ぐな道を車で通り

ふと顔をビーチに向けるとこのような大砲の残骸が

視界に入ってくるのだから。





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海中から顔を覗かせている錆びてぼろぼろになった戦車や

断崖絶壁に残された砲弾の跡など。

それは、見ない振りをして南国での休暇を全うさせるのには

あまりにも生々しくて

普段はナショナリズムなんて

持ち合わせていない振りをしているけれど。

しっかりこの目で戦争の爪痕を見て

記憶することが日本人としての責任であるような気もして。





だから、訪れる予定のなかったバンザイクリフと

最後の司令部、ラストコマンドポイントへと

どうか行かせてほしいと

同行者に頼みこんで、渋る同行者に謝りながらも足を向けた。




1度目も2度目のサイパンでも

その場所へ赴き

手を合わせて祈ってくることが

私のしなければならないことのような気がしたから。





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ラストコマンドポイントには

日本軍の本当に小さな戦車と小さな砲台があって。

崖をくり抜いて作った

粗末な司令部の朽ち果てた壁や床や天井の

そこらかしこに

きっと、現在の私の息子たちと同じくらいの年齢だったろう

兵士たちの苦しみやりきれなさが

そのまま空を漂い彷徨っている気がするほど

悲しみに満ちていて、

若い兵士の苦しむ姿が、私の脳裏に浮かんでは

二人の息子達の姿とオーバーラップして。





この地点が陥落するときに、彼らの心に何が過ったろう。

遠く離れた日本の母親のこと、妻のこと、子供のこと、家族のこと。

愛する人のこと。



胸が締め付けられそうになった。



ラストコマンドポストから

背の高さ程のシダの生い茂る真ん中のアスファルトの一本道を

真っ直ぐに抜けると平に突き出た崖から

紺碧の海が見える。





終戦前年の1944年、アメリカ軍の激しい戦闘で

追い詰められた日本兵や民間人が、

アメリカ兵からの投降勧告、説得に応じず、

80m下の海に身を投じて自決した悲劇の断崖。




バンザイクリフ。




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多くの日本人たちが、「天皇陛下バンザイ」と叫びながら、

高くせりでた崖から荒れ狂う海へと身を投げていった。

その姿に衝撃を受けたアメリカ軍兵士たちは軍艦から

「もう戦争は終わる。降伏しろ」

と日本語で何度も何度も呼びかけて、制止しようとしたけれど

その言葉が日本人の「死ぬ美徳」に後押しをさせてしまい、

崖から飛び降りるものはあとをたたなくて。

多くの兵士は「バンザイ」と叫び、

また、一方で「お母さん」と言って死んでいく人。

子どもをかかえた女性。

海に散った数千もの命。




バンザイクリフはサイパンの最北部で、

祖国日本に一番近い場所だそうだ。





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悲しい記憶を抱えた島。

今でもたくさんの白骨が

森の中や海の中に眠り続けている島。

平和な時代に生きている私たちに

忘れてはいけないことを

語り続けていかなければいけないと教えてくれる島。





その島に浮かれ気分で行った私が

写真を撮らなかったのは今振り返ってみると

そんな理由からだったのだと思う。



そして、せめてもと

海に向って両手を合わせ

儚く散った命を慰めるために写した写真が

冒頭の一枚だったのだと思う。





あの戦争で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。





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