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断捨離・強引なひと。







40数年前、父は強引商法に負けた。






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GWの晴れた日に

姪が津波の水に浸かった本棚から

卒業アルバムを取り出そうと

必死になっていた。





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水を含んで膨らんだ本は、押しても引いてもびくともしないので

とうとうバールを持ち出して、大捕り物に発展した。

まあ、救出には犠牲がつきものかもしれないね。






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姪の手に負えなかったので

甥がバトンタッチ。





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何冊か引き出せれば、こっちのものだ。





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前列の本を全部出したら

奥から『ブリタニカ百科事典』が出てきた。

40数年前に父は、不意に訪れたブリタニカの

セールスマンを家に上げてしまった。

…というか、セールスマンが上がりこんで来た。

40数年前の田舎の素朴な家庭の父親だったのだもの

父は嫌な顔を見せないで、セールスマンに対応した。

訪ねて来た人を、門前払いなんてしない時代だった。

母はお茶に菓子まで付けて接待した。

その結果、このセールスマンは

延々十数時間も我が家に居座り

深夜になっても帰ってくれなかった。

柔和な顔をした強引なひとだった。

根負けした父は、当時の金額で30数万円(給料の何倍だったのだろう?)

というローンの契約書に判を押させられ

この『大百科事典』を購入した。

この辞典は全部英語で書かれているからして

当然のことながら、家族では誰も読める人間がいなかった。

「いつかは、子供でも孫でも

 読めるヤツが出でくるかもしれないさなあ。」

父は、自分を納得させるために

辞典や英会話教材のカセットテープを見つめ

つぶやいていた。

『クーリングオフ』の制度も無かった頃だ。

当時社会問題にまでなった、強引な『ブリタニカ商法』の

実は被害者だったのだよ、実家って。




津波の水に浸かったために

実家では、たくさんのモノを捨てた。

「もう、モノはいらない。」

津波の被害に遭ったひとたちが口を揃えて言う。

震災や津波はとても悲しい出来事だったけれど

不要・不適・不快なモノとの関係を、

文字通り、断ち・捨て・離れ

住まいの、暮らしの、身体の、気持ちの、人生の、

新陳代謝を促すきっかけになったかもしれない。





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本棚の板が浮いていた。

作り付けの本棚だから捨てるわけにはいかなくて

だけど、当分はきっとこのままだ。





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卒業アルバムは姪の手に戻ったけれど

水に濡れてぼこぼこ変形して

くっついて開かないページもある。

だけど、捨てられないモノだってやっぱりある。






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5月の初めの晴れた日、

津波の中を生き残った庭木が

懸命に愛らしい花を咲かせていた。




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「いつかは、子供でも孫でも

 読めるヤツが出でくるかもしれないさなあ。」



父はこうつぶやいたけれど

残念ながら、その後、我が一族からは

英語に堪能な人間は一人も出ていない。

この高価な辞典は、子供だった私が

人体解剖図の載っているページを開いただけで

終わってしまった。




捨ててしまえ。

高価だったなんてことに縛られずに。



私は震災の被害には遭っていないけれど

あの日から、確実に何かが変わった。

断捨離を考えるきっかけにもなった。

色々なモノとの関係を考え

もちろん人との関係も考える。










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