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土曜日は旅の記憶 Vol.8『恋の痛みとハロン湾』




7年前の夏に今世紀最大の失恋をした。

断っておくが私は子持ちだけれど独身で

片恋だった相手の男性も独身で

長い間の友人で心底好きなひとだった。

お願いだから私の人生から消えていなくならないでと

涙を浮かべて懇願したのに

アンタの顔も見たくない、おまけに声まで聞きたくないと

ガチャンと電話を切られて終わってしまった。






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そこまで嫌うなんてあんまりだわと

目の前が真っ暗になり立ち上がることさえできない気がしたが

住宅ローンは抱えているし、下の息子はまだ高校生だし

こうなりゃ自棄のヤンパチで

とにかく立ち上がるしかないのだと

その年の秋にビジネスシートの航空券をどーんと購入し

5つ星のホテルを予約してベトナムへと旅立った。






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ベトナムを選んだ理由なんて

ビジネスチケットが安くて宿泊費が安くて

物価が安くて近いから丁度いいわ~という他愛もないものだったけれど

泣いて過ごすのには惜しい気もしたので

ハノイの街なかのキオスクで募集していた

世界遺産『ハロン湾』巡りのミニバスツアーに

とりあえず参加をしてみた。







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ツアーは北米やら、欧州やら、豪州やら

各国様々の参加者が全員で25名ほどで、

ドキドキしながら座ったバスの隣の席に

後から乗り込んで来た男性が東洋人の顔をしていたので

Where is your country?

Can you speak Japanese?

と話しかけたが最後

まーよく喋ること、喋ること。






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僕は日本語なんて全然話せないよ。

5日前に香港から仕事でやって来て

それからずっとホテルに缶詰さ。

やっと今日、日曜日だからね、休みを取って

このバスツアーに参加したってわけ。

僕? 仕事は電話会社の営業マンなんだ。





とかなんとかかんとか

私の英語力なんておかまいなしに

黄さんという名の男性は楽しそうに話し続け






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バスがドライブインに止まった時も

ランチの時も

ハロン湾クルーズも

鍾乳洞見学も

ずーっと楽しそうに私に付いて歩く。






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私はね、今世紀最大の失恋をしたばかりで楽しんでなんかいないのよ。

だいたい、私の英語能力なんてあなたが話していることを

理解するだけでいっぱいいっぱいよ。

お願いだからだまってて。私を独りにして。





とは言えない性格なのだよ、私って。

結局のところ、ニコニコ愛想笑いを浮かべて

お相手をしているものだから






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こんなふうに、恋人同士のように

ツーショット写真を撮る結果になった。





黄さんはバスがハノイに戻った時に、食事を誘ってくれたっけ。

一瞬、今後の人生は香港の高層マンションで暮らすのも

悪くはないかもしれないと思ったけれど

「明日の朝の早い便で日本に帰るから。」と断ってしまった。






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こめんね、黄さん。

だってタイプじゃなかったの。

タイプだったらどうだったのかしら。




人生に、…たら、…れば はないのだから

結局は、なるようにしかならないもので

今の私は、やはり今の私なのだと思うけれど

7年前のあの秋の1日は

泣き出したい私を慰めるための神様からの

プレゼントだったのかもしれないと思う。

香港の黄さんは、タイプじゃなかったけれど

あの日の一日は泣かずに終わった

こころ休まる一日だったと今になって思う。



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余談ですが、このバスツアーのランチでは見知らぬ10人程の人達と
テーブルを囲んだのですが、英語圏のそれぞれの国の方が、
「おまえの国の英語はなまっているよな。」とか
「何言ってんだよ、アンタの国の英語は言い回しが古いよな。」とか
言い合っていたのが面白かったです。
さしずめ日本人が方言のけなし合いをしているみたいですが
国際色豊かで、同じ英語でも国によってこんなに感じ方がちがうのだと
会話にはもちろん参加できませんでしたが、興味深く聞いていました。

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